キタノカオリの特徴と魅力がわかる! 国産小麦でパンを焼き比べてみた
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パン職人やパン好きの間で、マニア心をくすぐる小麦として知られる北海道産の小麦品種、「キタノカオリ」。希少性が高く、「奇跡の小麦」とも称される貴重な小麦です。
山本忠信商店(ヤマチュウ)が運営するECサイト・Eating Hokkaido(イーティング北海道)でも、看板商品として不動の人気を誇っています。
プロはもちろん、ご家庭のホームベーカリーでも使えるキタノカオリ。今回は、このキタノカオリを「まだ使ったことがない」という方にも魅力をお伝えするべく、道産小麦の「きたほなみ」と比較してご紹介していきます!
キタノカオリの基本情報。「奇跡の小麦」と呼ばれるわけは
キタノカオリは、9月頃に種をまき、翌年の7月下旬頃に収穫する「秋まき小麦」です。収穫直前に雨に当たると、実った小麦が発芽する「穂発芽」(ほはつが)を起こし、品質が低下するリスクがあるという、栽培が難しい希少な品種でもあります。これが「奇跡の小麦」といわれる理由の一つ。パン職人からしても、キタノカオリ100%の小麦粉を扱えることは、とても贅沢なことなのです。
パンマニアの心を引き付けてやまない理由は、「色味」「香り」「甘さ」の三拍子が揃っていること。また、比較的吸水性が高くグルテンが強いという特性があり、製パン性に優れていることも特徴です。
Eating Hokkaidoを運営している山本忠信商店(ヤマチュウ)は、キタノカオリの安定供給に向けて、生産者の皆様とともになみなみならぬ情熱を注いできました。2019年の不作の年には、多くの卸売や小売店がキタノカオリの休売を余儀なくされましたが、ヤマチュウだけは一度も休売することなくご注文にお応えしてきました。これは、ヤマチュウのひそかな自慢です。
比較対象「きたほなみ」の基本情報。丈夫かつ懐が広い品種
きたほなみもキタノカオリと同じく、秋まきの北海道産小麦粉品種です。 気象ストレスや倒伏に対して比較的強く、総じて作りやすいことから、現在の北海道の秋まき小麦の約90%を占める主力品種となっています。
うどんなどの麺用、お好み焼き・たい焼き・タコ焼きといった粉物用の中力粉用途がメインでありながら、クッキーやケーキ等の薄力粉用途、超強力粉の「ゆめちから」や、キタノカオリとブレンドしてパン用として使うこともできる、懐の広い小麦粉でもあります。Eating Hokkaidoでも、定番商品として幅広い層の方々にご利用いただいています。

キタノカオリときたほなみ。色味の違いを比べてみた
魅力の一つに「色味」が挙げられるキタノカオリ。小麦粉といえば白色というイメージが強いですが、どれほど違うのか、きたほなみと比べてみました。下の写真の左がきたほなみ、右がキタノカオリです。違いが分かるでしょうか?

キタノカオリの方が黄色味が強いことがわかりますね。パンも黄色味を帯びた仕上がりになるため、パン好きの方々に「希少なキタノカオリが使われている」ことを訴求しやすいのです。
ひと目でわかるこの黄色味こそ、キタノカオリの象徴。まさにブランドのアイデンティティです。
吸水性を比べてみた
次は吸水性を比べてみます。キタノカオリときたほなみを100gずつ準備し、それぞれに100gの水を加え、ヘラで練ったものを比較してみました。

左のきたほなみは、表面がなめらかで全体が平らに広がっており、もっちりとした粘りは感じますが、やわらかくベタつきがありそうです。一方、右のキタノカオリは形が崩れず全体が盛り上がっており、弾力がありそうなことが見て取れます。
同量の水でここまで質感に差が出る理由は、小麦粉に含まれるたんぱく質量の違いです。
小麦粉に含まれるたんぱく質は、水と混ぜてこねることで、弾力と粘りを持つ「グルテン」を形成します。たんぱく質の含有量が多い小麦粉ほど吸水性が高く、水を多く取り込んで強いグルテン網を作りやすいため、弾力が強くまとまりやすい生地になるのです。このグルテンの強さが、キタノカオリのもちもち食感を生み出すヒミツでもあります。
このことから、キタノカオリはきたほなみに比べて比較的たんぱく質が多く、吸水性が高い品種であるといえます。水を加えると、色味の違いもさらに際立って見えますね。
ハードトーストで焼き比べてみた
次に、きたほなみとキタノカオリで作ったハードトーストの生地を、食パン型で焼成しました。ハードトーストとは、砂糖や油脂を加えず、水・塩・酵母といったシンプルな材料のみで焼き上げるパンのことです。どちらもブレンドなし、単一品種の小麦粉100%で焼き上げました。一体、どのような違いが出るのでしょうか?

キタノカオリのハードトーストの高さは、きたほなみの1.2倍ほどに! オーブン内で生地が膨らむ、「窯伸び」のよさがよくわかる比較です。
では、断面も見てみましょう。

どちらもとってもおいしそうですが、キタノカオリ(右)のクラム(パンの内層)の黄色味がわかるでしょうか? これが、パン職人やパンマニアをひきつけてやまない、キタノカオリの証しなんです。
焼きたてのキタノカオリ100%パンを真ん中から割ってみると……、
クラムがちぎれず、手をつなぐように伸びています!
これこそ、グルテンがしっかりと形成され、強い弾力を持っている証拠。キタノカオリならではのもちもち感を、目で確認できた瞬間です。
最後に、日々さまざまな粉で多彩なパンを作っているヤマチュウのテクニカルエキスパート・椎橋さんに、おすすめの食べ方を聞いてみました。
キタノカオリ100%パンのおいしい食べ方
「ハードトーストなら、シンプルにトーストしてバターで味わうのがいちばん」とのことで、さっそく調理を開始。トーストしている最中に、すでにいつものパンとは違う鮮やかな香ばしさが広がります。
こんがりキツネ色に焼いたキタノカオリトーストに大きめにカットしたバターをのせ、バターがちょっと溶けてきたところで「いただきます!」。
ひと口目のザクッとした歯触りの後に、もちもち感が追いかけてくる食感の楽しさ。そして、バターの塩気でさらに引き立つキタノカオリの甘味。小麦の香ばしい香りが口いっぱいに広がり、思わず「うーん!」とうなってしまうおいしさです。厚めに切れば、外側と内側の食感のアクセントがさらに楽しめます。砂糖やバターを入れた食パンなら、サンドイッチもおすすめということですよ。
Eating Hokkaidoでは、希少品種であるキタノカオリを100%使用した小麦粉を販売しています。ご家庭でも使いやすい1kgサイズから、プロユーザー向けの10kg、25kgサイズまで幅広く取り揃えていますので、「キタノカオリでパンを焼いてみたい」という方は、ぜひ商品ページをご覧ください。こだわりの「石臼挽き全粒粉」(5kg)も販売しています。
お店を訪れるお客様やご家庭に、「おいしい」の笑顔が広がりますように!
