数字で見る「奇跡の小麦」キタノカオリ|希少性と復活のストーリー
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北海道産小麦の「キタノカオリ」は、甘味が強く焼き上がりが黄金色になる小麦粉として、多くのパン職人や消費者に厚く支持されています。素材へのこだわりを伝えられる国産小麦として、根強い人気を誇る品種です。
一方で、栽培の難しさから「奇跡の小麦」とも呼ばれ、2018年には危機的な不作に陥りました。それでも「この小麦を届けたい」という生産者の思いと、「この小麦でなければ作れないパンがある」という消費者の思いは途切れることはなく、今日まで流通が続いています。
キタノカオリの収穫量は減少傾向にあるものの、Eating Hokkaido(イーティング北海道)を運営するヤマチュウと栽培契約を結ぶキタノカオリ農家の戸数や収穫量は増え続けています。この記事では、数字を通してキタノカオリの希少性と、その歩みをひも解いていきます。
キタノカオリの道内作付面積はわずか0.8%

北海道農政部 生産振興局農産振興課が2025年3月に公開した「麦類・豆類・雑穀便覧」(麦類編)によると、2023年の道内の小麦作付け面積の合計は13万2,200ヘクタールとなっています。
その中で、全体の約7割を占める9万716ヘクタールの作付け面積を誇るのが、中力粉・薄力粉の主力品種「きたほなみ」です。その後に強力粉の「ゆめちから」(2万142ヘクタール)、同じく強力粉の「春よ恋」(1万5,169ヘクタール)が続きます。
キタノカオリの作付け面積は1,139ヘクタールにとどまり、割合としては0.8%ほどしかありません。日本国内で流通している小麦粉のうち国産小麦は2割未満、北海道産はそのうちの7〜8割という事実を踏まえると、その希少性の高さがよくわかります。
研究開発期間は15年、生育期間は10カ月

次にご紹介するのは「育成期間」と「生育期間」です。
ここでいう「育成期間」とは、新品種を生み出すための研究開発の全期間を指します。キタノカオリはパン用小麦の品質向上を目指して開発された品種で、「ホロシリコムギ」とハンガリーの品種「GK Szemes」を掛け合わせて生まれました。
約15年の育成期間を経て、それまでの国産小麦には少なかった高いタンパク質含有率と優れた製パン性を持った強力粉として、2003年に品種登録されています。
種まきから収穫するまでの「生育期間」は10カ月。キタノカオリは、9月中旬頃に種をまき、翌年の7月頃に収穫する「秋まき小麦」です。4月に種をまき、9月上旬までに収穫する「春まき小麦」と比べると栽培期間が長く、冬は土壌の凍結や雪腐病(ゆきぐされびょう)、収穫直前は雨に当たって麦が発芽してしまう(ほはつが)による品質低下につながるリスクもあり、生産者にとっては栽培が難しく手間がかかる品種でもあります。
キタノカオリを栽培することは、生産者にとっても大きな決断なのです。
危機的な不作に陥った2018年・2019年

そんなキタノカオリが、2018年・2019年と危機的な不作に陥ります。原因は、収穫期と天候不順が重なったことでした。収穫期や登熟期(種子が発育する時期)に低温と長雨が続き、収穫量が激減したのです。「北海道には梅雨がない」という定説を覆すような、雨が続いた2年間でした。
2018年・2019年は、多くの製粉会社や卸売・小売店がキタノカオリの休売を余儀なくされました。そうした中でも、生産者グループ「チホク会」と直接栽培契約を結んでいるヤマチュウだけは、一度も供給を止めることはありませんでした。これはヤマチュウのひそかな誇りです。
キタノカオリを栽培するヤマチュウ契約農家の戸数は2倍以上に

一時は収穫量が激減し、存続自体が危ぶまれたキタノカオリ。しかし、その魅力を知る消費者のニーズは衰えませんでした。栽培に苦労を伴いながらも「キタノカオリを必要としているお客様の元に届けたい」という熱意ある生産者のおかげで、ヤマチュウと栽培契約を結ぶキタノカオリの生産農家の戸数や栽培面積は次第に増えていきます。
全体的な収穫量が緩やかに減少しているにもかかわらず、ヤマチュウと契約を結ぶキタノカオリの生産農家戸数と作付面積は、不作だった2018年から2025年には約2倍以上に。
ヤマチュウは今後も、生産者の方々と二人三脚でキタノカオリの安定的な栽培に取り組み、Eating Hokkaidoを通じて、全国各地の事業者さんやご家庭にキタノカオリをお届けしていきます。
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