文化に根ざした、長く愛されるお菓子づくりを。道産素材と洋菓子の技で進化するどら焼き
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「ヤマチュウ(イーティング北海道運営会社・株式会社山本忠信商店)さんの素材、特に小豆は、袋を開けた瞬間に感じるにおいや色味が他社のものとまったく違います。供給が安定していることも、安心して利用できるポイントですね」
そう話してくださったのは、東京・文京区で和菓子店を営む上野純弥さんです。
上野さんのお店は、千石駅近くの住宅街の中にたたずむ「のをと菓子店」です。お店の前を行き交う方々が引き寄せられるように入店し、上野さんとにこやかに言葉を交わしながらお菓子を選んでいきます。
2022年12月に開店した同店は、今や地域に愛される名店の地位を確立。看板商品の「バニラ粒あんのどら焼き」「たまごミルク蒸しパン」には、イーティング北海道で販売している北海道産小豆や北海道産小麦粉「さらさ」が使われています。
実は上野さんは、北海道のご出身。「お菓子に北海道産の素材を使うことで、お客様にも自信を持っておすすめできる」と話す上野さんの、菓子職人としてのこだわりをたっぷりお聞きしました。
組み合わせの妙が際立つ「バニラ粒あんのどら焼き」

「バニラ粒あんのどら焼き」は、しっとりした甘さひかえめの生地に、バニラ香る粒あんが挟み込まれています。舌の上でほどける生地の質感とともに、小麦と豆の風味を包み込むような甘い香りが口いっぱいに広がります。その軽やかさは、もう一つ……と手が伸びてしまいそうなおいしさ。某グルメサイトの口コミでも特に高く評価される逸品です。
この「あん×バニラ」という意外な組み合わせは、どこから着想を得たのでしょうか。
洋菓子の思考で編み出した「あん」と「生地」
「どら焼きのあんには、絶対的な個性が必要です。バニラを入れたのは、あんの個性を出すために『発酵』という工程を組み入れたかったから。実は、『複数の工程を重ねて一つの味を作り上げる』という組み立ては、洋菓子の考え方です。小豆とバニラという個性をぶつけ合わせることで、互いの角が取れてまろやかになり、単一の素材では出せない新しいおいしさが生まれるんです」
あんそのものも、ヤマチュウが販売する小豆に加え、数種類の小豆をブレンドしていると話す上野さん。淡々とした語り口の奥にある真剣な眼差しから、お菓子作りに対する情熱とこだわりが伝わってきます。

一方で、のをと菓子店のどら焼きの真の主役は、あんを挟む「生地」なのだとか。上野さんによると、生地は「あんをおいしく食べるためのもの」だそうです。
「どら焼きの上の生地と下の生地は、役割が違うんです。下の生地は、あんの水分を吸う役割を果たし、上の生地はあんの香りが逃げないよう押さえてくれるもの。これらが調和することでおいしいどら焼きが完成します。今の設備では難しいのですが、いつか生地づくりにもパンの発酵の要素を取り入れてみたいと思っています」
どら焼きと並ぶもう一つの看板商品が、「たまごミルク蒸しパン」です。
素朴ながらつややかな見た目は、まるで満月のよう。
上野さんが「ケーキよりパンに近いものにしたかった」と話す通り、しっかり、もっちりとした歯応えです。食べ方が自由にアレンジできるようシンプルな味わいに仕上げられていますが、それゆえ素材の良さがまっすぐに伝わってきます。
「ご年配のお客様が『懐かしい味』と言ってくださるのが何より嬉しいですね。私が作ったもので感情を呼び起こすことができたというか、味が時空を超えたというか。もしかしたら『おいしい』と言われるより嬉しいかもしれません(笑)」
日本人の食に長く愛される味を。本場・東京でどら焼き作りに挑む
文化を感じられる「食」が好きで、もともとはフレンチの料理人だったという上野さん。前職は北海道・石狩でフランス菓子職人として働いていましたが、だんだんと日本の文化や生活に根ざしたお菓子を作りたいと感じるようになったといいます。
「日本の生活様式には、やはり洋菓子よりも和菓子の方が合います。例えば、菓子折りや仏壇へのお供え物。洋菓子が選ばれることもありますが、定番は和菓子です。歳を取った時に体が求めるのも、洋菓子ではなく和菓子だろうな、とも感じていました」
長年愛され続けるお菓子を作りたいと考え、挑戦を決意したのが「どら焼き」でした。
どら焼きを作るなら、そのおいしさを知る人が多い東京で勝負しなければ意味がないと考えた上野さんは、独立を決意。出店場所に文京区千石を選びます。
東京の有名店を巡って自分の舌でどら焼きを味わい、作りたいもののイメージが固まってきた段階で、試作に使っていたのは外国産小麦粉でした。
「当時は小麦粉に対する意識もそこまで高くなく、農薬に関する知識もありませんでした。でも作り込むうちに、和菓子を作るなら国産の良い素材を使いたいと思うようになったんです」
そこで上野さんが選んだのが、前職で出合ったヤマチュウの小麦粉でした。はじめは問屋から仕入れていたものの、割高なうえに他社の製品が誤って届くこともあり、仕入れをヤマチュウのECサイト「ファーム十勝」(現イーティング北海道)へ切り替えたそうです。
「産地から厨房に届くまでの間には、なるべく仲介者が入っていない方がいいと思っています。流通経路がシンプルだと素材のルーツが分かりますし、鮮度や品質が良い状態のものが手に入ります。それがそのまま、お菓子の味や品質に直結すると感じています」
夢はすべての素材が十勝産のどら焼き
小麦粉を外国産から北海道産に切り替えた直後は、扱いにくくなかなか品質が安定しなかったと話す上野さん。しかし、使い続けることで扱いのコツをつかみ、完成品も磨かれていったそうです。
「何にでも言えることですが、『継続すること』が大事なんです。一つのことを長く続けていると、必ず改善点が見つかる。どら焼きや蒸しパン、そのほかの和菓子も、長く作り続けてさらに良いものにしていきたいですね」
次は「小麦から水にいたるまで、全部の素材が十勝産のどら焼きを作ってみたい」と話す上野さん。伝統菓子に革新的な感性を織り交ぜながら生み出されるお菓子の数々は、今日も千石の街で、訪れる人々を笑顔にしています。
🫘 編集後記 🫘
取材班がお店にうかがったのは、日が傾き始めた15時頃。
店頭の和菓子はほとんど売り切れており、どら焼きが数個残っているだけ(!)でした。


お菓子は取り置きが可能とのことで、「次回は連絡してから来ます」と、ショップカードを持って帰られたお客様もいらっしゃいました。
店頭に並ぶとすぐに売り切れるというみたらし団子や、季節限定の和菓子も人気だそうです。
「開店後3年間は赤字でもいいから和菓子の質を上げることに力を入れようと考えていた」という、素材と製法にこだわり抜いた上野さんのお菓子、ぜひ召し上がってみてください!
のをと菓子店 店舗情報
営業時間:12:00〜16:00(※売り切れ時は早じまいすることがあります)
定休日:日曜日・月曜日
住所:東京都文京区千石4-37-9
アクセス:東京メトロ千石駅 A4番出口より徒歩4分、JR巣鴨駅 南口より徒歩5分
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